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【コラム】インフルエンザワクチンはいつ打つ?効果や接種時期について医師が解説(2025年版)

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インフルエンザワクチンの発症予防効果は約41%、入院予防効果は約44%と報告されています。効果はウイルス株により異なり、H1N1株では約55%、H3N2株では約27%となっています。日本での流行は例年12月から3月が中心。10月から12月中旬までの接種が理想的ですが、流行が続く限り年明け以降の接種も有用です。

「今年もインフルエンザの季節が近づいてきたけれど、ワクチンは本当に効くの?」「いつ頃接種すればいいの?」

皆さまからこんなご質問をよくいただきます。毎年のことながら、インフルエンザワクチンについては様々な情報が飛び交い、何を信じればよいか迷ってしまう方も多いかもしれません。
当院では、福岡市中央区舞鶴の地域医療を担う立場から、皆さまに正確な情報をお伝えしたいと考えています。今回は、最新の医学的エビデンスに基づいて、インフルエンザワクチンの効果や適切な接種時期について、分かりやすくご説明します。


インフルエンザワクチンの実際の効果

発症予防と重症化予防の効果

インフルエンザワクチンの効果について、「完全に防げるわけではない」という話を聞いたことがある方も多いと思います。実際、2024年に発表された大規模メタ解析によると、発症予防効果は約41%(95%信頼区間:39-44%)と報告されています。これは「100人接種したら41人程度で発症を防げる」という意味です。
一方で、より重要なのは重症化予防の効果です。入院が必要になるような重症化を約44%(95%信頼区間:40-47%)予防できることが分かっています。特に高齢者や基礎疾患をお持ちの方にとって、この効果はとても大きな意味を持ちます。

ウイルス株による効果の違い

インフルエンザウイルスにはA型(H1N1、H3N2)とB型があり、株によって効果が異なることをご存じでしょうか。最新の研究データによると、H1N1株に対しては約55%の予防効果が期待できる一方、H3N2株では約27%と低めになる傾向があります。これは、H3N2株が変異しやすい性質を持っているためです。それでも、「効果が低めだから接種しない」というのは少し早計かもしれません。流行する株は事前に予測できませんし、複数の株が同時に流行することも珍しくないからです。


接種時期と効果の持続期間

早めの接種が大切な理由

インフルエンザの流行開始時期は年によって異なり、早い年では11月下旬から患者数が増え始めることもあります。ワクチン接種後、十分な抗体(ウイルスと戦う免疫物質)ができるまでには1~2週間かかります。そのため、流行が始まってから慌てて接種しても、間に合わない可能性があるのです。
厚生労働省のガイドラインによると、日本でのインフルエンザ流行は例年12月から3月となっています。流行が本格化する前の10月から12月中旬までに接種を済ませることをおすすめしています。
特に、受験生や年末年始に旅行を予定されている方は、早めの接種を心がけてみてはいかがでしょうか。

また、医療機関が混雑する前の10月から11月上旬は、比較的スムーズに接種を受けられるメリットもあります。12月に入ると接種希望者が増え、予約が取りづらくなることも少なくありません。
「もう年が明けてしまったから、今更打っても遅い?」
そんなことはありません。米国CDC(疾病予防管理センター)のガイドラインでも、流行が続く限り接種を継続することが推奨されています。年明け以降でも接種する価値は十分にありますので、ご安心ください。

効果はどのくらい続く?

ワクチンの効果は永続的ではありません。特にH3N2株に対する効果は、接種後4~6か月で大幅に低下することが報告されています。ただし、早すぎる接種(7~8月)は一般的に推奨されていません。流行開始時期は予測が難しいため、10月から12月の接種が最も現実的といえます。

年齢別の接種推奨

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高齢者(65歳以上)の方

65歳以上の方は、インフルエンザによる重症化リスクが高いため、国の定期接種(B類)の対象となっています。自治体からの補助もあり、年1回の接種が推奨されています。高齢者では、ワクチン接種により入院リスクを大幅に減らすことができます。持病をお持ちの方は特に、かかりつけ医と相談の上、積極的な接種を考えてみてはいかがでしょうか。

妊娠中の方と赤ちゃんへの効果

妊娠中の接種は、お母さんだけでなく生まれてくる赤ちゃんも守ります。
CDCガイドラインによると、妊娠中はいつでも接種可能で、母体のみならず生後6か月未満の乳児の重症化・受診・入院リスクの低減が示されています。
生後6か月未満の赤ちゃんはワクチンを接種できないため、お母さんからの抗体で守ることが重要です。妊娠中のどの時期でも接種可能ですが、詳しくは産婦人科医とご相談ください。

お子さま(生後6か月以上)

厚生労働省のガイドラインでは、13歳以上は1回、13歳未満は原則2回(1~4週間隔)の接種が基本とされています。保育園や幼稚園、学校などの集団生活では感染リスクが高くなるため、早めの接種をおすすめしています。特に受験を控えたお子さまは、体調管理の一環として接種を考えてみてはいかがでしょうか。


企業・職場での集団接種について

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企業向け訪問接種サービス

わかばハートクリニックでは、福岡市内の企業様向けに訪問による集団接種を実施しています。
職場は多くの人が長時間過ごす場所であり、インフルエンザが広がりやすい環境です。従業員の健康管理と事業継続計画(BCP)の観点から、職場での集団接種は重要な対策といえます。

企業向け集団接種の特徴

・医師・看護師が直接職場にお伺いし、業務時間内に接種が可能
・最小20名様から承っております
・10月以降の実施で、日程は柔軟に調整可能
・福岡市内が対象エリア(市外については個別にご相談ください)
・接種により職場全体の感染リスクを低減
・健康経営の取り組みとして、従業員満足度の向上にも貢献

詳細については、こちらのページをご覧いただくか、お電話(092-737-8836)までお問い合わせください。

▶ 企業向け集団接種のお申し込みはこちらから

日常生活での予防対策も大切

ワクチン接種と併せて、日常生活での予防対策も重要です。

・こまめな手洗い・手指消毒
・適度な湿度の保持(50~60%)
・十分な睡眠と栄養バランスの良い食事
・人混みを避ける、マスクの着用

これらの基本的な対策を組み合わせることで、より効果的な予防が期待できます。症状が気になる方、ワクチン接種を検討されている方は、お早めに当院へご相談ください。皆さまの健康状態やライフスタイルに合わせた最適な予防方法をご提案いたします。


まとめ

インフルエンザワクチンは完全な予防はできませんが、発症リスクを約41%、重症化による入院リスクを約44%減らすことができる重要な予防手段です。
特に高齢者、妊婦さん、基礎疾患をお持ちの方、小さなお子さまがいるご家庭では、積極的な接種を考えてみてはいかがでしょうか。また、企業様においては、従業員の健康管理と事業継続の観点から、職場での集団接種もぜひご検討ください。
接種時期や回数など、ご不明な点があれば遠慮なくご相談ください。私たちわかばハートクリニックは、皆さまの健康を守るお手伝いをさせていただきます。一人で悩まずに、まずはお気軽にご相談ください。皆さまに合った最適な予防方法を一緒に考えていきましょう。



監修
わかばハートクリニック 医師
田代 紘朗

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参考文献

  1. 厚生労働省. (2023). 令和5年度インフルエンザQ&A. 健康・医療インフルエンザワクチン(季節性).
  2. Guo J, et al. (2024). Real-world effectiveness of seasonal influenza vaccination: A systematic review and meta-analysis. Vaccine, 42(8), 1883-1891.
  3. CDC/ACIP. (2024). Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines -- United States, 2024-25. MMWR Recommendations and Reports, 73(5), 1-25.
  4. Ferdinands JM, et al. (2024). Protection against influenza hospitalizations from enhanced vaccines among older adults: Network meta-analysis. Journal of the American Geriatrics Society, 72(12), 3875-3889.
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