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【コラム】今の症状は風邪?インフル?それともコロナ?受診したほうが良い?知っておきたい迅速抗原検査について(医師監修)

発熱や咳の症状が出た時、その原因を正確に診断するには適切なタイミングでの検査と医師の総合的な診察が重要です。新型コロナウイルス・インフルエンザ同時抗原検査は10分で結果が判明しますが、それぞれのウイルスで検査の最適なタイミングが異なることを理解しておくことが大切です。

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発熱、咳、のどの痛み...こうした症状が出ると「ただの風邪?それともインフルエンザ?もしかしてコロナ?」と不安になりますよね。特に仕事や家族への影響を考えると、早く原因を知りたいという気持ちは当然です。実際の臨床現場では、これらの症状を引き起こす原因は実に多様で、検査だけでなく医師による総合的な診察が欠かせません。今回は、発熱時の迅速抗原検査について、正しい知識をお伝えします。

迅速抗原検査で何がわかる?

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検査の仕組みと特徴

新型コロナウイルス・インフルエンザ同時抗原検査キットは、鼻腔から採取した検体に含まれるウイルスのタンパク質(抗原)を検出する検査です。10分で、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルス(A型・B型)の感染を同時に調べることができます。

検査結果の解釈

・陽性の場合:ほぼ確実に感染していると判断できます(特異度95-100%)
・陰性の場合:感染していない可能性が高いですが、検査のタイミングによっては見逃すことがあります



検査タイミングの違い:インフルエンザと新型コロナウイルス

インフルエンザ検査の特性

インフルエンザの抗原検査には、明確な時間依存性があります。研究データによると:

・発症12時間以内:感度約40%(偽陰性が多い)
・発症24-48時間後:感度約65%まで上昇
・発症48時間以降:感度約70%

つまり、発熱してすぐの検査では、実際は感染していても陰性と出やすいのです。高熱や強い全身症状がある場合は、翌日の再検査を検討することが重要です。

新型コロナウイルス検査の特性

一方、新型コロナウイルスの抗原検査は、インフルエンザとは異なる特性を持ちます:

・症状が出たらすぐに検査可能(インフルエンザのような「12時間待つ」ルールはありません)
・発症から7日以内が最も検出しやすい時期
・初回陰性でも、症状が続く場合は48時間後に再検査が有効
・発症5日を過ぎると感度が低下する傾向

新型コロナウイルスの場合、個人差や変異株による影響が大きく、画一的な「待機時間」を設定できないため症状があればすぐに検査し、陰性でも慎重に経過観察することが推奨されています。



発熱の原因は多様:医師の診察が重要な理由

なぜ検査だけでは不十分なのか

医師による診察は、検査の限界を補完する重要な役割を果たします。身体所見と検査結果を組み合わせることで、診断の精度は大幅に向上します。実際、発熱を引き起こす疾患は100種類以上存在します。例えば、細菌性肺炎、尿路感染症、敗血症などの感染症から、膠原病や悪性腫瘍などの非感染性疾患まで、さまざまな可能性を考慮する必要があります。これらは問診と身体診察により初めて疑われることが多く、検査だけでは見逃される可能性があるのです。

インフルエンザ後の重篤な合併症

特に注意すべきは、インフルエンザ後の続発性細菌性肺炎です。インフルエンザによる入院患者の20-30%に肺炎(ウイルス性・細菌性を含む)の合併が報告されており、このうち細菌性肺炎は1-2割程度とされています。症状がいったん軽快した後に、再び高熱や咳・痰の増悪、息切れが出現する場合は、二次性肺炎を強く疑う必要があります。

*インフルエンザの重症化予防のためにもワクチン接種が重要となってきます。ワクチンの効果や接種時期についてのコラムもございますので、ぜひご覧ください。
▷コラムはこちらから



当院での診察・検査の流れ

1. 詳細な問診と身体診察

症状の経過、発熱のパターン、随伴症状などを詳しくお聞きし、聴診や触診など全身の診察を行います。これにより、検査だけでは分からない重要な所見を見つけることができます。

2. 適切な検査の実施

【迅速抗原検査】

・新型コロナウイルス・インフルエンザ同時抗原検査:10分で結果判明
・症状や経過に応じた最適なタイミングで実施

【血液検査】

・血算・CRP:細菌感染とウイルス感染の鑑別
・プロカルシトニン:重症細菌感染症の指標
・肝腎機能:全身状態の評価

【画像検査(必要時)】

・胸部X線:肺炎の診断

3. 総合的な診断と治療方針の決定

検査結果、症状の経過、身体所見、周囲の流行状況などを総合的に判断し、最適な治療方針を決定します。

4. 個別化された治療の開始

【インフルエンザの場合】

発症から48時間以内の抗ウイルス薬投与により、症状期間の短縮と重症化予防が期待できます。高齢者や基礎疾患のある方では、48時間を超えていても臨床判断により治療を開始することがあります。

【新型コロナウイルスの場合】

重症化リスクの高い方には、経口抗ウイルス薬などの治療選択肢があります。

【細菌感染の合併が疑われる場合】

適切な抗菌薬を選択し、二次感染による重症化を防ぎます。

5. 継続的なフォローアップ

初診時の診断がすべてではありません。症状の経過を注意深く観察し、必要に応じて治療方針を修正します。



よくあるご質問

Q. 発熱してすぐに受診してもよいですか?

もちろん受診は可能です。ただし、抗原検査を希望される場合、特にインフルエンザでは発症から少し時間を空けると検査精度が上がることをご理解ください。発症12時間以内では偽陰性の可能性が高くなります。一方で、症状がつらい時や他の疾患の可能性も考えられる場合は、検査のタイミングを待つ必要はありません。医師が診察により、総合的に判断いたします。

Q. 検査が陰性でも治療は必要ですか?

検査結果と臨床診断は必ずしも一致しません。症状や診察所見から治療が必要と判断される場合があります。特にインフルエンザは、検査陰性でも臨床的に強く疑われる場合は治療を開始することがあります。

Q. どのような追加検査が必要になりますか?

血液検査により、細菌感染とウイルス感染の鑑別、炎症の程度、臓器障害の有無などを評価します。必要に応じて、胸部X線検査で肺炎の有無を確認します。



まとめ:適切な診断と治療で早期回復を

発熱の原因は多様で、「風邪」「インフルエンザ」「新型コロナウイルス」の判別には、適切なタイミングでの検査と医師の総合的な診察が不可欠です。
インフルエンザと新型コロナウイルスでは検査の最適なタイミングが異なること、そして検査だけでなく医師の診察による総合判断が重要であることを理解していただければと思います。早期の適切な治療により、重症化や合併症を予防することができます。
わかばハートクリニックでは、患者さま一人ひとりの症状と背景を丁寧に評価し、最適な診療をご提供いたします。「この症状で受診していいのかな」と迷われた時こそ、どうぞ遠慮なくご相談ください。皆さまの健康回復のために、私たちが全力でサポートいたします。

監修
わかばハートクリニック 医師
田代 紘朗

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参考文献

  1. 日本呼吸器学会. (2024). 成人肺炎診療ガイドライン2024. 日本呼吸器学会出版.
  2. Akashi Y, et al. (2021). 発症から検査までの時間がインフルエンザ迅速抗原検査に与える影響. 感染症学雑誌, 95(1), 9-16.
  3. CDC. (2024). Laboratory-Confirmed Influenza-Associated Hospitalizations. MMWR, 73(SS-6), 1-15.
  4. IDSA. (2024). COVID-19 Guideline, Part 5: Antigen Testing. Clinical Infectious Diseases.
  5. 厚生労働省. (2024). 新型コロナウイルス感染症診療の手引き 第11版.
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