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【コラム】健康診断で「血圧高め」と言われたら?~健康診断シリーズ(高血圧症編)~

健康診断で「血圧が高め」と言われたけど、特に体の不調もないし...。
そのような経験がある方は多いのではないでしょうか。健康診断で「血圧高め」(高値血圧:診察室130-139/80-89mmHg)と判定された人は、国内成人の約4割に上ると推定されています。高血圧は「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」と呼ばれ、気づかないうちに血管や臓器にダメージを与えていく特徴があります。
今回は、健康診断で「血圧が高め」と指摘された方に、最新の科学的根拠に基づいた4つの対策をご紹介します。

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●高血圧を放置してはいけない理由

症状がないからといって高血圧を放置すると、下記の病気が進行する可能性があります。

脳卒中・心筋梗塞:正常血圧と比べて1.5~2倍のリスク
認知症:将来の認知機能低下や認知症発症リスクが上昇
腎不全(透析):収縮期血圧150mmHg以上では、透析が必要になるリスクが2.7倍
心不全:高血圧があると心不全発症リスクが71%増加

しかし、5mmHgの収縮期血圧低下でも、主要な心血管イベントを10%減少させることができます。健康診断で血圧の異常を指摘されたら、まずは医療機関での精密検査をおすすめします。特に以下の値が出た場合は早めの受診を↓

収縮期血圧160mmHg以上または拡張期100mmHg以上:早急な受診が必要
140/90mmHg以上:医療機関での詳細な評価を推奨

家庭血圧135/85mmHg以上が続く場合も、1か月後には内科受診を推奨します。

●初診時に行われる検査

医療機関での初回評価では、包括的な検査が実施されます:

【基本的な検査項目】

詳細な問診(生活習慣、家族歴、服薬歴)
血圧測定
血液検査(腎機能、血糖値、コレステロール、血圧に関わるホルモン値)
尿検査(蛋白尿の有無)
心電図検査・胸部レントゲン検査

これらの検査により、単なる高血圧なのか、他の病気が原因なのか、すでに臓器への影響が出ているのかを総合的に判断します。当院では、これらの標準的評価に加え、患者さんそれぞれの生活背景を考慮した治療計画を作成します。

●エビデンスに基づく4つの生活習慣改善

現時点で臓器障害や併存疾患が無ければ薬物療法は必須ではありませんが、以下の生活習慣改善を
始めることで、収縮期血圧を6-10mmHg低下させることができる可能性もあります。

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【対策1:減塩】

ヨーロッパ心臓病学会(ESC 2024)および欧州高血圧学会(ESH 2023)のガイドラインでは、食塩摂取量を1日6g未満に制限することが最も強く推奨されています(Class I / Level A)。これは高齢者でも安全に実施でき、塩代替品を用いた研究では収縮期血圧が約7mmHg低下することが示されています。

すぐに始められる減塩方法↓

出汁や香辛料、レモンで味にアクセントを
麺類のスープは残す(これだけで2-3gの減塩)
加工食品・外食の頻度を減らす
食卓に調味料を置かない

【対策2:運動】

WHO(2021)およびメタ解析により、有酸素運動またはインターバル歩行を週150分行うことで、高血圧患者の血圧が有意に低下することが確認されています。成人を対象とした研究では、12か月のライフスタイルコーチング介入により、48か月後も収縮期血圧が5.8mmHg低下していたという長期効果も報告されています。

日常生活に取り入れやすい運動↓

早歩き(1日30分)
インターバル歩行(速歩と通常歩行を交互に)
階段の利用
水中ウォーキング

【対策3:適正体重の維持】

最新の研究では、高値血圧から軽症高血圧の患者を対象に、DASH食(高血圧を防ぐ食事法)は8週間で約2kgの減量とSBP -11mmHgを達成し、地中海食でも同等以上の効果が示されました(Filippou et al., Clinical Nutrition, 2023)。

体重管理の実践方法(食事)↓BMI25未満を目標に、以下の食事法を実践します:

野菜、果物を毎食取り入れる
全粒穀物(玄米、全粒粉パンなど)を選ぶ
魚、鶏肉、豆類を中心にタンパク質を摂る
低脂肪乳製品を適量摂取
赤身肉や加工肉を控える
間食にはナッツ類を少量

月1-2kgの緩やかな減量を目指すことで、リバウンドなく継続できます。

【対策4:睡眠】

最新メタ解析では、夜間睡眠6時間未満で高血圧リスクが17%増加し、60歳未満では24%増加することが報告されています(Qi et al., Journal of General Internal Medicine, 2025)。一方、短期間でも睡眠時間を延長し、睡眠効率が改善すれば平均動脈圧が約5mmHg低下する可能性が示唆されています。そして、睡眠不足はもちろん過剰睡眠はともにリスクとなります。

同時に睡眠時無呼吸症候群(SAS)のチェックも重要です。
一般成人の2-4%が有病とされ、耐性高血圧例では30-80%がSASを合併しています。CPAP治療により24時間収縮期血圧が平均4-5mmHg低下することが複数のRCT・個人データメタ解析で確認されています。大きないびきや日中の強い眠気があれば、まずは検査を検討しましょう。
*当院では睡眠時無呼吸症の簡易検査の実施が可能ですのでご希望の方はお問い合わせください!

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睡眠の質を高める工夫↓

7-9時間の規則的な睡眠時間を確保
規則正しい就寝・起床時間を守る
寝室の環境整備(室温18-22℃、遮光カーテン使用)
夕方以降のカフェイン摂取を避ける
就寝前のスマートフォン使用を控える

高血圧は適切な対策をすることでコントロールできます。健康診断で「血圧が高め」と指摘されたら、まずは医療機関を受診し、そして今日から実践できる4つの対策を始めることが大切です。また、早期の適切な介入により、将来の心血管イベントリスクを大幅に低減することが可能です。



監修
わかばハートクリニック 医師
田代 紘朗

参考文献:

1.日本高血圧学会. (2019). 高血圧治療ガイドライン2019. ライフサイエンス出版.

2.World Health Organization. (2021). Guideline for the Pharmacological Treatment of Hypertension in Adults. WHO.

3.Filippou, C., et al. (2023). DASH vs. Mediterranean diet on a salt restriction background in adults with high normal blood pressure or grade 1 hypertension: A randomized controlled trial. Clinical Nutrition, 42, 1807-1816.

4.Qi, J., et al. (2025). The Association Between Sleep Duration and the Risk of Hypertension: A Systematic Review and Meta-analysis of Cohort Studies. Journal of General Internal Medicine. doi:10.1007/s11606-025-09398-6.

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